ヴェーダ プルシャ グニャーナ ヤグニャの奥義

G.V.スッバラオ著

1962年以来、長年にわたって、バガヴァン ババは、人類の物質的・霊的幸福 を促進するために、ダサラ祭期間中の7日間、ヴェーダ プルシャ グニャーナ ヤグニャと呼ばれる儀式を執り行ってこられました。3年ほどの休止期間の後、この儀式 の執行が、今年(1997年)の10月にプールナチャンドラ大講堂で、再開されました。

この儀式(ヤグニャ)は、神を感知する意識を確保するための手段です。この儀式は、マントラと供物と神が司ります。ですから、この儀式を7日間行うことによって、人は二重の幸福(シレーヤ)と、神意識(グニャーナ)を手に入れるのです。 なぜこの儀式を7日間行わなければならないのかと尋ねる人もいるかもしれません。7という数字には、創造にまつわる特別な秘儀があります。たとえば、7つの世界(サプタ ローカ)があって、7人の賢者、7つの海、7つの聖なる山、7つの音階が存在し、太陽の光には7つの色がある等々、と言われています。もしこれらのものを、神の象徴として崇拝していれば、神意識が生じます。ヴェーダの教えに従って、7日の間儀式を行うことにより、人間は、無知の7つのベールを取り除き、霊的知識の7段階を上って、解脱(モークシャ)を得ることができます。

儀式を始める前に、ヴェーダの学者(パンディット)たちは、儀式を行う場所を清めるためのマントラを唱えた後、儀式を行うための誓いの言葉を、聖典に処方されたとおりに唱えます。

この儀式に参加する、オレンジ色の衣を身にまとったすべてのヴェーダ学者たちは、 マンディール(神殿)から、縁起のよいナーダスワラムの音楽と、学生たちのヴェー ダの詩篇の吟唱に合わせて、行列になって進み、プールナチャンドラ大講堂に到着します。

儀式は、聖なる犠牲の火を灯すことによって始まります。この火は、僧侶たちが神聖な2本の木の棒をすばやくこすり合わせることによっておこされます。木の棒の中に潜んでいる火が、摩擦によって自然に発火することによって、犠牲の火(護摩の火)が燃え始めるのです。これは、宇宙の万物に神が内在していることを象徴しています。もし私たちが目を内に向ければ、自分のハートの中にある、神の輝きそのもの の光を体験することができると、バガヴァン ババは幾度となく宣言してこられま した。

この儀式では、7つの主な神々に祈りが捧げられます。それは、ガネーシャ、スーリヤ(太陽 神)、デーヴィ(母なる女神)、ブランマー、ヴィシュヌ、シヴァ、アグニ シャクティの7神です。ヴェーダを伝播する神である、4つの顔を持つブランマー神を称え て、ヴェーダの詠唱が行われます。帰依の火の捧げ物を神々に運ぶ火の神アグニもまた、護摩の火への捧げ物によってなだめられます。全部で7つの聖なる力に対する礼拝が行われます。バガヴァンは、これらの力はすべて人間に備わっていると宣言されました。

特定の神に対する礼拝が行われる前に、礼拝に邪魔が入らないように、ヴィグネー シュワラ(ガネーシャ、ガナパティ)の助けが求められます。ガナパティは、聖なる マントラ「オーム」(原初の音)の化身である第一の神として崇められています。ガナパティは、知識とさまざまな力を授ける神様です。

太陽神への礼拝は、この儀式の中で重要な部分を占めています。この太陽神礼拝に携わる僧侶は、太陽神に対して全身を使って行う礼拝(スーリヤナマスカール)を捧げ ながら太陽に関する神聖なマントラを繰り返し唱えます。太陽は健康を授ける神であ り、太陽系のすべての惑星の主神です。この礼拝は、物質的な太陽にではなく、太陽を司るスーリヤナーラーヤナ神に捧げられます。

この儀式(ヤグニャ)のもうひとつの重要な特徴は、女神(デーヴィー)への礼拝です。 この女神は、パラメーシュワリーであり、チットスワルーピニーであり、マーヤースワルー ピニーです。この女神は、自然と、宇宙の母の象徴であり、愛の至高の化身です。女神は、神の物質的な7つの形を表しています。儀式の中では、「ラリータ サハッスラ ナーマ」(女神の1,008の御名)の詠唱と、「デーヴィー バーガヴァタム」の朗読により、女神に礼拝が捧げられます。

この儀式の中では、バーガヴァタムとプルシャ スークタムの詠唱によって、ヴィシュヌ神への礼拝が行われます。ヴィシュヌ神は、プルシャ スークタムの中で、全宇宙 に遍満している宇宙の主神として賞賛されています。シュカ尊者は、パリクシット王に、この世を去る直前の七日間にわたってヴィシュヌ神の栄光を聞くことによって、 王は解脱を得ることができると言いました。

ヴァールミーキが著した『ラーマーヤナ』の朗読は、この儀式のもうひとつの重要な項目です。霊的な求道者にとって、毎日『ラーマーヤナ』を読むことは、素晴らしい 価値があります。このような背景の中で、スワミはスンダラカンダ(美の章)の特別 な重要性をしばしば強調していらっしゃいます。ヴァールミーキはこの章で、ラーマ の最高の帰依者ハヌマーンを称えています。

この儀式の最も重要な側面は、シヴァ神への礼拝です。この礼拝は、シヴァの1,000 のリンガにプージャー(礼拝の儀式)を捧げることと、7日間毎日、「ルッドラム」を唱えながら護摩の火に供物を捧げることによって行われます。儀式の最後の日には、バガヴァンがさまざまな貴重な品を物質化されて、それを護摩の火にお捧げになりま す。バガヴァンは、すべての人一人ひとりが護摩の火に捧げるべきものは、各人の悪い性質であると宣言していらっしゃいます。スワミは、護摩壇から立ち昇る、神聖なマントラの力に満ちた聖なる煙は、空の中に入り、雲から降ってくる雨を浄化する、と説明してくださいました。こうして、護摩の火から立ち昇る煙は大気と地上の穢けがれ を浄化するのです。

創造主としてのブラフマー神は、この儀式の中で、僧たちによるヴェーダの吟唱に よってなだめられます。ヴェーダは永遠であり、すべてのダルマの基盤です。バーラ タ(インド)は、ヴェーダの魂として、また、ヴェーダを世界に与えた国として高く評価されています。バガヴァンは、多くのご講話の中で、ヴェーダの栄光を宣言して いらっしゃいます。

リグ ヴェーダとヤジュル ヴェーダを習得した学者たちは、儀式の中で主要な役割を受け持っています。バガヴァンは、ヴェーダのマントラに備わる、浄化の力と犠牲の力をしばしば強調してこられました。

儀式(ヤグニャ)の行われた七日間を通して行われたバガヴァンによる御講話は、帰依者にとって、正真正銘の霊的な御馳走です。バガヴァンが、最もわかりやすい言葉 で、最も深遠なヴェーダの真理を説明してくださるので、不二一元論の教義や、個々の魂と至高の神我とがひとつであることを、誰でも理解できるのです。実にこれこそが、「霊的英知の儀式」(グニャーナ ヤグニャ)の真の目的なのです。

ババは、儀式に参加した僧侶全員と他の人々に、衣類その他の贈り物なさって栄誉を授けます。今年のヴェーダ プルシャ ヤグニャは、プラシャーンティ ニラヤムの歴史上、最も記念すべきものの一つ となりました。


出典:https://www.sathyasai.or.jp/ashram/festival/yajna.html原典:Sanathana Sarathi, December 1997.