ドゥールヴァー スークタムについて

ドゥールヴァー草は、薄緑色や深緑色をした種類が豊富な短茎(たんけい)草本(そうほん)(丈の低いイネ科の草の総称)で、湿地帯によく見られ、豊かに生長して、たくさん生い茂ります。様々な礼拝で使用されるドゥールヴァー草は、どんな供犠をするときにも不可欠です。祈りの中で水が捧げられるときは、必ず一房のドゥールヴァーを水の中に軽く浸して、草についた水を神像にふりかけます。

この草は浄化作用があると考えられています。草の葉は礼拝者によって様々な浄化行為のために用いられ、礼拝者に目に見えない神聖さと清浄をもたらすと信じられています。

仏教徒もまた、ドゥールヴァー草を8つの吉祥な物ののうちの一つとみなしています。仏教徒は、この草が生命力が強いことで知られているので、正精進(八正道の一つ。正しい努力)を促すと信じています。最近の科学的な調査によると、この草に薬効があることがわかりました。

ドゥールヴァー草はまた、母なる大地の女神を象徴しており、ドゥールヴァー スークタムの最後の2節は、この大地の女神に向けられています。礼拝者は、母なる大地の女神の守護を祈ります。母なる大地は、馬や二輪戦車に乗る人々によって横断されるものとして語られています。

ヴィシュヌ神はヴァーマナ アヴァター(小人の姿をとって現れたヴィシュヌ神の5番目の化身)の時に、三界を支配していた大帝バリから、3歩分の土地をもらう約束を取り付け、第一歩で全地上を踏み、第二歩で天界全体を踏みしめ、第三歩目をバリの申し出通りバリの頭の上に置かれて、バリの高慢を砕くとともに、改心したバリを祝福しました。礼拝者はここで、ヴィシュヌ神の3歩目を担ったバリの立場に自分自身を置いています。

ドゥールヴァー スークタムは、伝統的に、早朝に川や湖で沐浴をするときに繰り返し唱えられますが、その際、少量の土や、2、3枚のドゥールヴァー草の葉を頭の上に置いて、自己浄化を促進する象徴的な行為があります。


Ms. Lalitha Vaithilingam, Ms. Nirmala Sekhar and others, Vedic Chants: The Journey Within, 3rd ed., Prasanthi Nilayam, 2010, pp.II-41-II-42.